August 15, 2014

ももたの痛み


毎日ももたの事を考えている


亡くなる1ヶ月ほど前
要介護4でありながらも
明るく朗らかで弱音など一度も吐いたことのないももたが
ぽつりと

「痛いなぁ・・・」

と、病床で呟いた

時が止まった
私は何も見えなくなった
真っ白い空間に放り出されたような中で
ももたはもう一度

「痛いなぁ・・・・・」

と諦めるように言った

私はももたを抱きしめ、その痛みを僕によこせと、何度も叫んだ
涙が止まらなかった


以前、医師とのやり取りでこんなことがあった

医師はももたのキャラクターから
痛みの表現が大げさではないかとのイメージを持っていたらしい
ある日、背中から強い注射を打つ際に

「この注射は世界中で一番痛い注射です、でも打たねばなりません、覚悟してください」

とももたに予告し、注射を開始した

ももたは

「先生、こんなの痛い内に入りませんよ・・」

と返した

先生は初めてももたの痛み実態を理解し、申し訳ないと仰った
それ以降、処方される痛みどめの種類が変わった


でも反面、不都合な問題も起こった
新たな薬の副作用による痛みだ
私はももたに負わされた新たな痛みを知りたかった
知る必要があった
ももたは一部の薬を飲むと、手足にしびれが起こり
その痺れがひどくなると、痛みに変わると言っていた

まず、そのしびれを伴う薬を私が飲んでみることにした
患者以外飲用厳禁と書かれているが、知る必要があった
対象となる薬は2種類
オキソコンチン40mgとオプソだった

まずコンチンを割って、半分飲んだ
ももたは何ヶ月もかけて、
5mg, 10mg, 20mg, 40mgと徐々に
激しい薬作用に体を慣らしてきているからだ
最初の1時間、何も起こらなかったが
飲用して2時間目に平衡感覚が無くなった

極度のめまいと視野の狭まりが始まった
同時に胃をねじられるような吐き気が襲ってきて
トイレでひとしきり吐いた

めまいは更に増し、
トイレから這うように出てきて、床に倒れ込んでしまった
4時間ほど経っても、めまいと吐き気は治まらなかった
先ほどあれだけ吐いたのに、またしてもトイレに駆け込み、
便器に顔をうずめるようにして吐いた
殆ど吐くものが無いのに、吐いた

再度トイレから這い出し、リビングの床に突っ伏した時、
私は両腕にももたの言う異様な痺れが出ていることに気付いた
正座をして足がしびれ、それが回復し始める時に感じる、じりじりとした不快なしびれを、増幅器で数倍の強さに加圧したような痛みだ
それが徐々に強まってくる
結局その強い痺れのような痛みと吐き気は8時間続いた

後日私はオキソコンチンの量を再考してもらうよう、
医師に進言し、処方量を少なくしてもらった
それ以降、ももたの痛みの一部は軽減されることとなった

オプソも飲んだが、これはそれほど強い薬ではなかった
ももたに再度確認すると、オプソによる痛みではないと思うとの事
これはその後も飲用を継続した


薬による副作用の一部の痛みは私も体験した
でもそれはももたの痛みの氷山の一角に過ぎない
私はももたに
「どれくらい痛いか、噛んでみて」
と腕を差し出して頼んだ
ももたは暫く私を見ていたが、
私の腕を持って噛んだ
私は痛みで叫んだ
血がにじむほど痛かったが
ももたは彼女の痛みはこれの何十倍だという様子だった

確かに、医師が言った世界一痛い注射ですら、
ももたの痛みに比べると蚊が刺したようなレベルなのだ

ももたが耐えていた痛みを思うと
今も時が止まってしまう
何もできなかった無力感、詫びても詫びきれない不甲斐無さ、
無念の極み、悲しみの極みに支配される
ひょっとしてももたも今、同じように、
凍えるような孤独の中に居るのではないかと思うと
何も手に付かず眠れない












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proue335uriuri at 21:43│Comments(0)TrackBack(0)from the Other Decades | momota

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